サターンリターン(漫画)の感想。
「おんなのいえ」や「先生の白い嘘」を描いた鳥飼茜さんの新作。
「サターンリターン」。
死と生と性、喪失をテーマに描かれる物語。
STORY
「30歳になるまでに死ぬ」といって本当に死んでしまった友人“アオイ”。
主人公はデビュー作以来、新作を描けないでいる小説家、加治利津子。
彼女に新たに若い編集者がついた。
熱意ある彼は死んだ“アオイ”を訪ねる旅を提案。
どうして亡くなったのか。
私はこれからどうしたいのか。
感想
アオイは男性の友人。
過去と現実が交差していつも橋のイメージになります。
これが意味するところはなんなのでしょうか。
少しだけミステリ要素がある展開だと思います。
死んだ友人は利津子の小説に出てくる人のモデル。
そのアオイが小説を一ページ千切っていた。
手紙を捨ててしまったので今となってはわかりません。
死んだ人の過去を探る話というのは日本映画や文芸作品にありがちだとは思いますが、漫画で表現してまるで映画のような人物描写にはとても惹き込まれると思います。
鳥飼さんの近年の作品でよく描かれるのが人の営みのシーン。
それが余計にキャラたちを漫画っぽくさせません。
リアル。
なので、音が聞こえてきそうだし、声も聞こえてきそうなのです。
ですから、これから衝撃的な展開になったらとても心をえぐるのではないかと危惧しています。
まるで過去の関西弁を話す利津子とは打って変わって、死んだように生きている。
恋人と同棲しているものの、ちゃんと向き合っていません。
小説を描けるようになるのか、答えがとても知りたいです。
アオイの死の真相も気になります。
私はこの物語に救いを求めます。
アオイが生きるために、生きた証拠を描こうと思って彼をモデルにしました。
俺を描いてよ、と彼が言うので。
私も小説を描く者なので、誰かの生きた証拠を描くのは、すごく素晴らしいと思いました。誰かを生かすために描くのだから。
ところが、アオイが前向きになったとき、利津子は手を手放しました。
それが彼女を亡霊のようにさせてしまうのです。
けれど、簡単な話とはいかないようです。
一巻の終わりにまた謎を呼んでました。
まるでドラマや映画をみた気分となれる漫画です。
何か、大事なことを忘れている、考えないようにしているのではないかと思う方にお勧めな作品です。
ぜひ、一巻を読んでみてください!