上遠野浩平「製造人間は頭固い」ブギーポップの外伝的対話集の感想!
製造人間、でピンとくるかたはすぐに統和機構が浮かびますよね。
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こちらの作品は、電撃文庫より長いこと続いているシリーズ「ブギーポップ」の敵側、つまり「世界の敵」側の視点で描いた物語です。
上遠野浩平さんの小説は、独特な言いまわしで頭を使うので積読してあったものにようやく手をつけました。
あらすじ
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
人間を生物兵器・合成人間に造り変える力を持つ“製造人間”ウトセラ・ムビョウ。彼を説得してその能力を発動させようとした人々を、ウトセラは独自のロジックで翻弄していくー“無能人間”の少年コノハ・ヒノオに始まる双極人間/最強人間/交換人間との邂逅、そして奇妙な論理で導かれる結末とは…“ブギーポップ”シリーズの裏側を明かす、異能力者たちによる新対話集。書き下ろし「奇蹟人間は気が滅入る」を収録。
感想
言葉の内容を理解しようとするのは無駄です(笑)最初から言っておきます。
でも、自分たちが当然のことだと考えている認識がもしかしたら、それっておかしなことなんじゃないかと、キャラたちの対話で、気づく……というか、瞑想して迷走するようなお話です。
対話は相変わらず、哲学的なんですが、異能力者らの対決はまるで時代劇と少年漫画と、ハリウッド的感覚ですね。
今回、製造人間をつくりだしている人がメインです。
名前はウトセラ。
本編で聞いたことがあったかもしれませんが、どこでだったか忘れました。
それともお初でしたか。
それはともかく、それを忘れていても楽しめる内容でした。
こんな人が作っているんだ、ふーん。マッドサイエンティストかと考えてました。
思ったより、つかみどころないけれど、何かを模索しているキャラだと思いました。
そういう風には見えませんが。
彼は、気まぐれか赤ん坊を製造人間化することで救います。
その子供を預かっているところから、統和機構内で波紋が広がります。
その子は特別な能力があるのか。
何か企んでいるのか。
または、その子は特別かもしれない。我々の方で預かろうとか。
でも、ウトセラは子供、ヒノオに言います。
「君は無能だよ」と。
しかし、それ以上の問題定義はしないのです。
ヒノオ自身は犬を育てることとなるのですが、自分が生きる意味を自分なりに捜しはじめます。それに、ウトセラは製造人間をつくる能力に疑問を持っています。
その人物に変化を与えるのではなく、その相手自身が持っていた本来の力が目覚めるだけ、なのかもしれないと。
彼は希望を見出したいのかもしれません。
そういったはっきりとした描写はありませんが、膨大な対話の中にキャラたちの持論が展開していきます。
フォルティッシモも出てきますし、ボーナス本です。
あわよくば、ブギポも出てほしいですね。
今回もフォルテさんは強いやつを所望しておられますが、ウトセラは口がまわるけど、能力は製造人間をつくこと以外ないんですよね。
あるとすれば、やはり製造者として製造人間の能力をよくわかっている、ということ。
ただ者ではありません。
二巻も出ているそうなので、内容を忘れないうちに続きを読みたいと思います。
頭を使うので、読み終わったあとの快感。
奇跡人間がこれからどういった立ち回りになるのかも、気になりますね!
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