舞台「変半身(かわりみ)inseparable」を観に行きました。
ストーリー
近未来。東洋のガラパゴスと呼ばれている千久世島という離島は、かつてない賑わいを見せていた。
国産みの神話に登場する島であると同時に、その島で発掘される「レアゲノム」という化石由来のDNAがヒトや動物の遺伝子組み換えに必要なものとして注目を集めているからだ。その島に住む男は、奇祭で弟を失う。
ところがある日、弟は蘇り、まるで別人のように男の前に現れる。弟の存在は島の住民を狂わせていく。
そしてそれは、島の存亡を揺るがす事態に発展していく……。
こちらでも書きましたが、小説芥川賞作家「コンビニ人間」で知られる村田紗耶香さん原作、松井周さんという演出家さんが共同プロジェクトで企画された舞台です。
三重県の津市で上演されたものを観に行きました。
チケットは事前に入手しておりましたよ。
感想(ネタばれあり)
冒頭で、この世界観がわかります。
ゲノムパッチ社という東京を本社とする、製薬会社研究所によって全国のレアゲノムは発掘・供給されてます。
その東京から派遣されてきた丸和さん(元宝塚の安蘭けいさん!)と島の人らと会社に所属する島の人らの打ち合わせシーンから始まります。
近未来なので、遺伝子操作あたりまえで、それに必要な資源がレアゲノム。
生殖行為も免許が必要で勝手にしてはいけません。
なので、昔に自由にできたことを「野良交尾」といって野蛮だと話しています。
村田紗耶香さんの小説は日常の常識を疑うことから始まります。
家族の中で性行為をするなんておかしいから家族になったら別の恋愛パートーナーを作るとか(別の小説内で)
それによって性犯罪が消えたというのはうなづけます。
あと自分の子供をコーディネートできます。
このあたりは非リアリティでありながら、もしかしたら遠い未来ではあり得る設定でもありますよね。ないか??
舞台である千久世島にはレアゲノムがあるということで、会社が管理しています。
島には派閥があって海のもんと山のもんが対立しています。
主人公の男(高城秀明)の弟(宗男)がまるでゾンビのようによみがえってきたことで揉めはじめます。
弟は神話の話をし始めるんですね。
この世界には神話があります。
ポーポー様という完全体の神がいたのですが、分身を作るんですね。
その分身がポーポー様の一部を食べてしまいます。
すると糞詰まりになってしまいます。
分身には肛門を作っていなかったので(笑)ちょっとギャグなんですよね。
そして、分身に浣腸します。
すると詰まっていたものが溢れでます。
海と日本と、最後にイルカがでてきます。
イルコというイルカの祖先でしたか。
お話が進む途中で、補足説明のように愉快な音楽に乗って兄役の男性が紙芝居で説明してくれました。
ちょいちょいライトが消されて彼が出てきます。
最初、補足説明をする方だと思っていました。違うんです。
これは別世界にいるもう一人の兄(秀明)だったのです!!
そして、ゾンビ状態である弟がときたま「あちらの世界」に戻ってしまうのです。
あちらの世界の秀明は神様で、自分たちが本当の世界だと思っていたこの世界を自分の細胞で作ったと話します。
弟である宗男も自分の細胞から作ったということです。
神様の大学で卒業作品として。
世界は崩壊しそうになっていることを宗男は訴えます。
事実、イルカの急激な繁殖でバランスが崩れていきます。
このあたりから奇妙な世界観になっていくんですよ。
イルカが増加したことから、人ではなくイルカ語を習って遺伝子も取り入れて共存していく形を選択する人らも出てきます。
ゆるやかに崩壊していく世界。
冒頭で現れたゲノム社の丸和さんがほとんど出てこないと思っていましたが、彼女は彼女で神話の住人、イルコだったのです。
伏線としていつもイルカと泳いでいるとは言ってました。
ついていくが大変な展開ですね。刺激的な舞台になるとは思っていましたが「ええっ」ばかりです。
そして、宗男が秀明に抱いていた愛。それは同姓愛であすがあたりまえです。
なにせ、同じ体だったのだから。
この作品タイトルである「inseparable」=切っても切れない、ということです。
観終わったあと、なるほどと思いました。
ゲノムで欲を出す者、遺伝子操作があたりまえで超えてはいけないものを超えてしまう者、意味のない派閥など、コアな部分に触れていく作品でした。
息をのむシーンや、笑ってしまうシーンもあります。
そう、重いテーマかと思いきやギャグシーンもあるのです。
絶妙です。舞台には笑い要素ほしいですね。
だって息がつまりますからね。
終わりは寂しいものでした。
静かに幕を閉じましたが、ほっとしました。
行き付くところにたどり着けたと。
衝撃が強い作品です。
村田さんの小説版も出ておりますが少し内容が違うようですね。
それもぜひ、読んでみたいと思います。